SAVE 2023 Value Summit 参加レポート

今年も「SAVE 2023 Value Summit」(2023年6月12日~14日開催)に参加してきました。ファンクショナル・アプローチの今と、ホットな情報をレポートします。

▍毎年開催される世界大会、今年で63回目

Value Summit は、ファンクショナル・アプローチ(FA)の発祥の地、アメリカで毎年開催されています。主催するのは米国社団SAVE国際協会(SAVE International)で、FAの開発者であるローレンス・D・マイルズ氏(Lawrencse D. Miles、» more)が設立した協会です。

FAが世界中の地域や業界に広がり、それぞれの知見を持ち寄って、発表し議論し交流するイベントです。実践的な事例と、最新の研究がシェアされます。

上の写真は、左から今大会の実行委員の John Corcoran氏、SAVE国際協会会長の Michael Pearsall氏と副会長の Robert Stewart氏です。

今年の Value Summit は、3日間に渡って開催され、毎日、3時間ずつ開催時間がズレていく「タイムシフト」方式のスケジュールとなっており、参加しづらいタイムゾーンへの配慮が行われたプログラムとなっていました。300名近い参加者が集った(主催者発表)とのことです。

毎日、基調講演があり、オープニングセレモニー・表彰セレモニー・クロージングセレモニーと、結局、全ての時間に参加することになるので、睡眠サイクルが大いに乱れてしまいました。

残念だったのは、参加者通しが交流する仕掛けがなかったことです。発表者へのQ&Aの時だけなので、別のSNSで個別に連絡を取り合う感じでした。

▍プレゼンテーションは宝の山

今回は、バーチャル開催ということもあって、発表されたプレゼンは 28 セッションに絞られました。多数の応募から厳選されたとのことなので、興味深いプレゼンが結構ありました。

特徴的だったのは、インドや中東の発表が多かったことです。ほとんどが製造業の適用事例ですが、世界的に人口爆発と経済成長で注目されている国だけあって、人材層は厚く、事例も豊富にあるようです。

製造物のコスト削減といったオーソドックスな事例のほか、ジョブプランを工夫する試みがあったり、使い慣れた既存の技法とファンクショナル・アプローチを統合する方法を研究したり、ナレッジマネジメントとして技術の継承に使おうとしたりといった、ユニークな発表も数多くありました。

一方で、ベテラン勢も数は少ないものの、豊富な経験からファシリテーションのポイントを整理したり、バーチャル方式でワークショップを行う上での調査分析結果と注意点を公開したり、実践面で役立つノウハウも得られました。

▍横田尚哉も発表

実は、私もプレゼンテーションの機会をいただきましたので、世界に向けて発表してきました。タイトルは、こちらです。

Proposing “Means-User Linking Technique” with the use of “User-by-Attribute Evaluation Table” – Case Study on Proposing DX to a Japanese Municipality for its Public Improvement(「ユーザー属性別評価表」を用いた「手段・ユーザー連動法」の提案 ~日本の自治体への行政サービスのDX化提案の事例~)

どのような内容かと言うと、改善案に応じて、ユーザーを連動させることで、より正確な評価をする技法を提案しました。

本来は、ユーザーを固定して改善するのですが、特殊なケースでは連動させたほうがよいこともあるのです。たとえば、行政サービスのDX化を進めるケースです。

現行分析の段階では、現在のユーザー(紙申請世代)を対象に分析するのですが、改善提案の段階では、未来のユーザー(スマホ申請世代)向けのサービスとして提案するケースです。

上の写真は、大分県津久見市長と同市役所職員の方々との写真です。津久見市のように、民間技術を積極的に取り入れていく行政が、今後も増えていくことを願っています。

▍新しいボードメンバーと来年の大会

今年は、ボードメンバーの改選の年であり、この大会の終了とともに新しいボードメンバーが着任されました。新しい会長は Robert Stewart氏、副会長は Hussien AL-Battaineh氏です。

会長のスチュワート氏は、建設系のコンサルタント会社の社長であり、長い付き合いです。「VM Guide」(» more)の執筆仲間でもあり、Fellowの称号(» more)の推薦者の一人でもあります。

その彼が、これから2年の間で何をするのか、とても楽しみにしています。私もできる限り、彼の支援をしたいと思っています。

そして、2024年の Value Summit は、テネシー州ナッシュビルでの開催になりそう(正式には未確定)です。久しぶりの渡米ができると思うと、もう既にワクワクしています。日本からたくさんの人が参加されることを願っています。