日本における価値の概念とは

ファンクショナル・アプローチでは、「価値」の概念を扱います。一言で「価値」といっても、捉え方・使われ方が様々です。

私なりに、価値の概念を研究し、整理しました。そして、日本における価値の概念には、歴史的背景があり、現在まで進化してきたことを知りました。

いま私たちの周りにある価値の概念は、精神的価値観・社会的価値観・経済的価値観の3つに分類できます。

▍精神的価値観

精神的価値観は、日本固有の哲学に、東洋の哲学が融合しました。

日本固有の哲学の代表は、紀元前7世紀より続く「神道」です。

この神道とは、現代も皇室と天皇制により継承されており、自然と神とは一体として認識される日本の信仰の一つです。

教典や具体的な教えはなく、開祖もおらず、神話、八百万の神、自然や自然現象などにもとづくアニミズム的・祖霊崇拝的な民族宗教の一つです。

物を所有したり、人を支配したりする考えはなく、全てが恵みであり、与えられるものと考えます。

全ての恵みは「ありがたい」ものであり、与えられるものは「いただく」ものです。物の価値というよりも、その状況を受け入れることに価値観が置かれます。

▍社会的価値観

社会的価値観は、日本の「武士道」の概念に、西洋と東洋の概念が融合しました。

武士道とは、16世紀頃に広まった日本独自の思想です。

日本人の特性である忠誠心や道徳心の源であり、それらを追求する姿勢(価値観)です。

日本のものづくりの精密さ(品質)を生み、相手を敬う心(和)を生み出しました。真実・善・美などの言葉で表されています。

物の価値というよりも、人に尽くすこと、人の役立つことに価値観が置かれます。

▍経済的価値観

経済的価値観は、日本の「商人文化」の行動哲学に、西洋の行動哲学が融合しました。

代表的な商人文化に、近江商人です。近江商人の行動哲学の一つに、「三方よし」があります。

「三方よし」とは、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の3つです。

売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならないとする共存共栄の行動哲学です。

そこに、西洋の行動哲学が融合し、使用価値、交換価値、労働価値、価値のパラドックスのどの価値観につながっています。

▍この文章の保存

この文章は、2019年に横田尚哉が作成しました。そして、2020年に出版された米国の書籍『VM Guide』(SAVE International, 2020)に英語で掲載されています。 

出典;”VM Guide”, SAVE International, 2020