雲梯の法則

雲梯(うんてい)という運動具がありますが、遊んだことはありますか?

どの時代でも、同じビジネス環境の中で、企業が継続的に活動できるということはありませんでした。どこかで予想外の事件が起き、常に想定外の天変地異が起きるのです。その時こそ進化のタイミングです。

実は、雲梯にはビジネスを進化させていく時のヒントが隠されているのです。

『ビジネススキル・イノベーション』(プレジデント社・刊、p221、≫more)にも書いておりますので、そちらもご覧ください。

▍雲梯という名の運動具

雲梯は、運動場の片隅にあったり、公園の端にあったりしていたものです。ちょうど、梯子を横に渡したような形状をしており、片側の端から、ぶら下がりながら反対側の端まで進む運動具です。落ちないように前に進むためには、筋力とちょっとしたコツがいるモノです。

雲梯の原理を確認しましょう。腕力だけで前に進もうとする人は、どうするでしょうか。まず両手でぶら下がります。その後、片方の手を離し、ひとつ前のバーを掴みます。バーの間隔が広いと一苦労です。つかんだら、残りの手を離し、同じバーに両手でぶら下がります。この繰り返しです。

しかし、このやり方だと時間ばかり掛かってしまいます。そして、渡りきるまでの間に、腕の筋力が耐えられなくなります。いくら、腕力を鍛えていたとしても、ひとつずつ進むのは要領が悪いのです。このような仕事のやり方をしていませんか。

▍上手にわたるコツ

雲梯を上手にわたるには、コツがあるのです。それは、身体の反動を利用するのです。雲梯で楽しんだ方なら思い出していただいていることでしょう。身体を振り子のように前後に揺らしながら、前に進んでいくと、早くわたることもできるし、筋力をいっぱい使うこともないのです。小学生でも、軽々とできてしまうのです。

初めて見た人にとって、腕力を使う運動具のように見えるかもしれません。しかし、身体の重みを動きに変え、バランスとタイミングを合わせることにより、前に進みやすくなるのです。腕力だけではなく、ちょっとしたコツなのです。上手な人は、握るバーを1つ飛ばしにできるほどになります。

だから、コツを知り、コツを利用することが大切です。目先の問題を腕力で対処しようとするのではなく、使える部分をフルに使いましょう。そうすれば、問題は軽々、乗り越えていけるでしょう。このような仕事のやり方をして行こうということです。

▍手放すタイミング

雲梯で最も重要な点は、手放すタイミングです。手放すタイミングを間違えると、ロスが大きいのです。手放したときにエネルギーが放出されます。そのエネルギーを推進力に使うのです。身体が後ろに振り切れた後、前に振れ始めたあたりが、手放すタイミングです。そうすると、身体は大きく前に伸びるのです。

仕事でも同じです。バーはビジネスであり、身体は企業です。時代は前に進んでいます。企業としても前に進めなければなりません。1つのビジネスにしがみついていては、一向に前に進まないということです。時代の先を行くビジネスに移っていく必要があります。

そのためには、タイミングを見てビジネスを手放すことです。企業は後退することもあるでしょう。後ろまで振り切れた後、前に振れ始めます。その時こそが、古いビジネスを捨てる時です。この瞬間を見逃してはなりません。それが前に進むエネルギーなのです。より先のバーを掴むためには、そのエネルギーを最大限活用することです。

だから、手放すタイミングが大切なのです。躊躇していると、タイミングを逃します。雲梯のようにリズミカルに手放していけば、スイスイと時代の先端に進めることができるのです。これが、私が「雲梯の法則」と読んでいるものなのです。

▍雲梯は攻めれば楽しい運動具

雲梯は、当然リスクが伴います。一時的に、身体を片手で支えることになります。前のバーをつかみ損ねると、身体は後ろに戻ります。そうこうしているうちに、握っている手の握力に限界が来て、落ちる羽目になってしまいます。時代から振り落とされて、振出しに戻るようなことはしたくないですね。守るか攻めるかです。

守るなら、1つずつ確実に進めることです。攻めるなら、身体の反動を利用して1つ飛ばしで進めることです。時代の変化が激しい今、多くの国や企業が1つ飛ばしで進んでいます。悠長に1つずつ進めている場合ではないかもしれません。しかも、身体はいつの間にか重くなり、握力がいつまでもつか心配です。

やはり、雲梯は攻めることで楽しめる運動具です。雲梯は、直線に進むものですが、ビジネス界は四方八方に広がっています。企業が目指したいところにいち早く到達したいものです。過去を手放し、未来を掴む。この繰り返しのコツをつかんでいただきたいです。

是非、楽しい雲梯にチャレンジしてください。企業でも、個人でも同じことです。より未来のバーを掴むことです。そして次の瞬間、未来のバーは過去のバーになることを忘れないでください。躊躇なく手放す決定を下してほしいと思います。