人体モデルを見習いたい

従業員が増えてくると、企業の業務や人材の管理は、科学的・論理的に行っていかないと管理できなくなってしまいます。

いわゆる官僚的経営になっていくわけですが、これこそが大企業病の原因でもあるわけです。

私は、大企業をクライアントとして経営コンサルタントをしています。これまで、多くの大企業を見てきましたが、本当にそれしか道はないのでしょうか。

先日、5,000人を超える従業員のいる企業の社長と話をしていて、思ったことがあります。

大企業を維持していくためには、進化することよりも、安定することが大切だということです。今の顧客、未来の顧客に対して、責任があるからです。

しかし、安定を目指すあまり、進化しにくい組織と管理体制を構築してしまうことは、企業の成長にとってリスクです。

マニュアルが制御し、組織が硬直し、やがて本格的な大企業病に陥っていくことでしょう。

ますます身動きが取れず、時代の変化、顧客の変化についていけず、老いていくことになります。

 

ところが、人体という有機的組織体は、すばらしいマネジメント能力を持っています。その数値を比較すると驚きます。

人体は、3兆個の細胞で生まれ、60兆個まで細胞数を増やして成長します。それだけの大きな組織になっても、それぞれがきちっと機能しています。

それを制御しているのは、たった140億個の脳細胞です。毎日6,000億個の細胞が、おのおので勝手に新陳代謝しています。

制御しきれない暴走細胞であるがん細胞は、年間で180億個発生していますが、免疫機能により排除されていきます。

 

例えば、60,000人が働く企業があったとしましょう。ヒトの仕組みと同じように置き換えてみるとよくわかります。

60,000人の従業員(全細胞)を制御しているのは、たった14人の本社職員(脳細胞)になります。

そして、毎日600人が入れ替わり(新陳代謝)ます。そして、指示に従わず暴走し解雇される社員(癌細胞)が年間2人ほどいます。

 

この違いは、なんでしょうか。

決定的な違いは、DNAの存在です。1つ1つの細胞にはまったく同じDNAがあり、それに基づいた行動をとっているということです。だから、100年近く存在し続けることができるのです。

このような企業が、究極の理想的な組織モデルかもしれません。トップの指示は、神経という回路をつかって電気的に指示が出されるのです。

そして、血管やリンパ管という循環器系本部のネットワークをつかって、物資の分配と改修が行われています。この物流をつかさどっているのが心臓ですね。

売上は、消化器系本部からの食べ物と呼吸器系本部からの酸素であり、事業は運動器系本部の肉体労働であったり、神経系本部の知的労働であったりするわけです。

こうして考えると、企業のDNAである社是や経営理念は、自律した理想的な組織の実現のために、とても重要だということです。

 

ムダがなくとても身軽な組織体。ヒトも企業もこうありたいものです。