FAが行政運営執行指針の重点項目に
大分県津久見市の「行政運営執行指針」にファンクショナル・アプローチ(以下FA)を活用することが明記されました。
FAは、「知識から知恵を生み出す思考システム」です。人の思考に作用するため、どのような活動にも適用できるのです。
この思考システムを身につけた職員がいれば、行政改革や市民サービス向上など、日々行われている全ての業務に活用でき、行政運営をより良くし続けることができます。
津久見市は、行政運営にFAを積極的に取り入れることを他の行政に先駆けて明確に示すことで、これらからの行政運営に影響を与える大きな一石を投じられました。
▍職員の育成を推進するためにFAを活用
まず、注目したいのは、「重点項目3:計画的で効率的な地域経営の推進」です。
その中で、FAを積極的に活用しようと、津久見市が注目されたは、「人材育成」と「財政運営」です。
「人材育成」の項目に、「多様化する行政ニーズに的確に対応できる人材の育成」があります。職員研修の充実を図り、市民との協働によるまちづくりを担う職員の育成を推進していくという内容です。
その中に、FAの活用を次のように明記されています。
●ファンクショナル・アプローチの活用
物事を進める際に、常に「誰のため、何のため」の視点を持つな
ど、ファンクショナル・アプローチの手法を活用し、そのものの本
質を捉える力を養います。
(津久見市行政運営執行指針より)
「物事」とは、モノもコトも全てという意味で、あらゆる活動を総称しています。「誰のため、何のため」は、ファンクショナル・アプローチで常に問いかける質問です。答えようとすることで、本質に近づくことができます。
このような意識で行政運営できると、行政運営、ひいては市民サービスが向上すること間違いないでしょう。
▍業務改革・業務改善を図るためにFAを活用
もう一つ、注目されているのが「健全な財政運営」への活用です。
長期的な視点でこれからの行政運営を考えると、歳出の効率化はとても重要な課題です。
その課題とは、行政サービスの効果を変えることなく、必要な歳出を抑えることです。単に人員削減や経費縮小だけをすると、職員への負担が増えたり、サービス水準が低下するリスクがあります。
そこで、津久見市では、次のように明文化されています。
● 業務改革・業務改善による効率化
職員が個々の業務を進めるに当たって、常に「誰のため、何の
ため」の視点を持つなど、ファンクショナル・アプローチの手法に
よる業務のプロセスの見直しや業務改善の視点を持ち、過去の当た
り前にとらわれることなく、業務の効率化を図ります。
(津久見市行政運営執行指針より)
「業務のプロセスの見直し」とは、成果主義や結果論でとらえるのではなく、ほんとうの意味での業務改善です。
「過去の当たり前にとらわれることなく」とは、先入観や固定観念にとらわれることなくという意味です。コダワリ・シガラミ・オモイコミを手放して、目的思考で業務の効率化を図るという意味です。
▍「誰のため、何のため」で真に必要なものを判断
さらに、他にもFAの思考が取り入れられています。それは、「重点項目1:効率的で利便性の高い行政サービスの提供」の中です。
いま行政のデジタル化・DX化は、どこの行政でも行っています。しかし、「とりあえずデジタル化」のようなことをしてしまうと、古いプロセスをそのままデジタル化して終わりになってしまいます。
まずは、FAの思考でプロセスを見直し、その上でデジタル化をしていくことが必要なのです。
そういうところを、次のように文章で示されています。
③行政のデジタル化・DXの推進
新型コロナウイルス感染症の影響により、行政においても非対面・非接
触などの促進や行政の効率化を図るため、デジタル化・DXの推進が不可
欠となっていることから、外部人材を活用し、スピード感を持って情報技
術の調査研究・導入を進めます。
情報技術の導入に当たっては、導入することが目的とならないよう、そ
の業務が「誰のため、何のため」なのかを念頭に置き、津久見市にとって
それが真に必要なものなのか判断をしながらデジタル化・DXを進めてい
きます。
(津久見市行政運営執行指針より)
まさに「導入することが目的とならないよう」にすることだと思います。デジタル化したかどうかではなく、デジタル化するファンクション(効用や役割)が達成しているかどうかなのです。
私は、「30年後の子どもたちのため、輝く未来を遺すため」を理念に、いろいろな企業や組織に働きかけ、FAの担い手にスキルを伝えてきました。
今回、津久見市が行政運営の執行にFAを取り入れていただけたことは、私の理念が一歩進んだことを意味します。大変ありがたい機会をいただきました。
このFAにいち早く着目し、積極的な推進と指導力を発揮していただいた、川野幸男津久見市長に心より感謝申し上げます。
