帰れぬ社員|逸話シリーズ⑦

ファンクショナル・アプローチ(FA)思考の大切さを伝える逸話シリーズ第七弾です。

今回は、「帰れぬ社員」の逸話です。

目的と手段を一致させてこそ、その時間に価値が生まれるという逸話です。

▍帰れぬ社員

ある日の夜、定年を間近に控えたベテラン社員が、オフィスの明かりがまだ一つだけ灯っていることに気づきました。

静まり返ったフロアを歩いていくと、若い社員がひとり、黙々とパソコンに向かっています。

「まだ仕事があるのかい?」と声をかけると、彼は少し苦笑いして「そうなんですよ。早く帰りたいんですけどね」と言います。

「だったら帰ればいいじゃない」と促すと、「でも、仕事が溜まってるので……」と答えました。

「じゃあ、がんばって残業するしかないな」と言うと、「でも、最近家族と全然話せてないんです」と、ぽつり。

「それなら、さっさと帰ったらどうだい?」と続けると、「でも締切に遅れると課長に怒られますし……」と困った顔。

ベテラン社員は少し間を置いて、静かに尋ねました。

「君は、どっちがしたいんだい?」

▍誰のため?何のため?

この逸話に登場する若い社員は、一見まじめに働いているようでいて、実は目的のあいまいさに悩まされています。

残業するなら、その時間を仕事の成果に集中すべきですし、帰宅するなら、家族との時間を大切にすべきです。

けれど彼は、「仕事のために残る」と言いながら「家族のことが気になる」、
「帰りたい」と言いながら「課長の目が気になる」と、
自分の時間の目的がぶれてしまっているのです。

本当に大切なのは、今この時間を「何のために使うのか」を自分の中で明確にすることです。

・仕事の時間なら、徹底的に仕事に集中する
・休む時間なら、しっかり休養にあてる
・家族と過ごす時間なら、家族に心を向ける

そのように目的と手段を一致させてこそ、その時間に価値が生まれます。

ファンクショナル・アプローチ(FA)は、「目的を意識し、手段の効果を最大化する」ための思考システムです。

いまこの瞬間が「誰のための時間か?」「何のための時間か?」と自分に問いかけてみてください。

そして、その答えに違和感がないなら、自信をもってその時間を全うしましょう。

それが、生き方の質を高める第一歩なのです。

 

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