魚の煮付け|逸話シリーズ④

ファンクショナル・アプローチ(FA)思考の大切さを伝える逸話シリーズ第四弾です。

今回は、「魚の煮付け」です。

理由を問い直さなければ、過去の制約が無意識のまま引き継がれていく。この逸話は、まさに「目的を問う思考」の大切さを教えてくれます。

▍魚の煮付け

ある日の夕方、とある男性が古い友人から夕食に招かれ、その家を訪れました。
ちょうどキッチンでは、娘さんが夕飯の支度をしており、魚の煮付けを作っているところでした。

ふと鍋を覗いた訪問者は、少し不思議そうな顔で声をかけました。

「おや、この煮魚、真ん中で2つに切ってあるんですね。丸ごと煮るのが普通かと思ったんですが、どうして切ってるんですか?」

娘さんは手を止めて、にっこり笑いながら答えました。

「母にそう教わったので、ずっとこうしてるんです。」

気になった訪問者は、今度は母親に尋ねました。

「娘さんは、お母さんに教わったと言ってましたが、どうして魚を切るんですか?」

すると母親は、少し困ったように言いました。

「ええ、私も正確には知らないんです。私の母がいつもそうしていたから、自然と娘にも同じように教えただけで……」

ますます気になった訪問者は、近くでお茶を飲んでいたおばあさんに聞いてみました。

「おばあさん、皆さんが理由を知らずに続けているようなんですが、どうして魚を2つに切って煮るんですか?」

おばあさんは、懐かしそうに笑いながら言いました。

「それはね、昔うちにあった鍋が小さくて、魚が丸ごと入らなかったのさ。だから半分に切ってたんだよ。」

▍誰のため?何のため?

この話は、私たちが「当たり前」と思い込んで続けていることの中に、実は「昔の都合や制約」が隠れていることを教えてくれます。

理由を知らないまま形だけが残ってしまうと、環境が変わっても、かつてのやり方を無意識のうちに繰り返してしまうのです。

私たちの日常にも、よく考えずに続けている「習慣」や「手順」はないでしょうか。

「なぜこうしているのか」「本当に今も必要なのか」と立ち止まって考えることが、より良い方法を見つける第一歩になります。

ファンクショナル・アプローチ(FA)は、「それは誰のためか?」「それは何のためか?」と問いかけることで、思考の焦点を「目的」に向けていく方法論です。

過去の常識や慣習にとらわれず、より本質的で合理的な選択肢を導くことができます。

 

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