アプローチ・チャート法とは
ファンクショナル・アプローチで使う技術です*1*2。
新しい手段を見つけるとき、先が見えないとき、私たちはどこに向かえばよいのか、わからなくなります。
そういう時に、ファンクショナル・アプローチがあれば、進むべき方向を示してくれるのです。羅針盤のようなもです。
▍大海原の羅針盤
何の頼りもない場所といえば、大海原でしょうか。今では衛星からの位置情報で航行しているでしょうが、それが故障したときはどうするのでしょうか。
伝統的な航行技術を使うことになるでしょう。たとえば、太陽や星の位置から緯度や経度を求める方法や、地磁気から方位をとらえる羅針盤を使った方法により、進むべき方向を知ることができます。
昔ながらの航行技術ですね。
▍では飛行機のパイロットはどうしている?
空の上も同様です。頼りになるものは何もありません。船と同じように衛星を使い、コンピューターにより位置を確認しながら飛んでいます。
しかし、視界が悪くなり「有視界飛行方式」(パイロット自身の判断で飛行できる方式)が選択できないときは、「計器飛行方式」(常に航空管制機関の指示に従って飛行する方式)となります。
その計器飛行方式で飛行するために、パイロットが使用する計器進入手順の印刷されたチャートがあります。それが、「アプローチ・チャート」(もしくはアプローチ・プレートと呼ばれる)です。

▍「アプローチ・チャート法」
ビジネスも、船や飛行機と同じなのです。先の見えない時代の中を進んでいるようなものです。そのため、迷いそうになったら、羅針盤やアプローチ・チャートのようなものを用いて、方向性をとらえる必要があります。まして、直感だけでイノベーションするには、リスクが大きすぎます。
そこで横田尚哉は、あらたな技法を開発しました*3。「ファンクショナル・アプローチ」の考え方は、1947年にGE社で誕生した思考システムですが、それに独自の技法として、その名も「アプローチ・チャート法」を加えたのです。
「アプローチ・チャート法」を使うことで、イノベーションの未来、改善の方向が目に見えるようになります。
- *3 『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》視点を変えるファンクショナル・アプローチのすすめ』(横田尚哉・著、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2008年)
▍6つの改善タイプ
たとえば、冒頭のグラフは、改善の方向をビジネスに当てはめたものです。これを使えば、そのビジネスがどこに向かおうとしているのかがつかめます。
使い方は、簡単です。横軸がリソースで、縦軸がパフォーマンスです。その改善により、リソースとパフォーマンスがどちらに向かうかです。そこから、6つの改善タイプに分けられます。
「①腰抜け」は、パフォーマンスが大きく低下するにもかかわらず、今よりもリソースを減らすことしか考えていない改善です。パフォーマンスの向上を検討すべきです。
「②愚か者」は、無駄なところにリソースをかけていることに気づかず、効果もなくただただパフォーマンスが低下する改善です。リソースのかけかたを検討し、新しい手段に変えていくべきです。
「③挑戦者」は、可能性があまりないにもかかわらず、果敢に投資していこうとする改善です。限られたリソースをもっと効率よくかけていくために、手段の見直しをしても良いと思います。
「④強気」は、ビジネスの強みを捉え、その強みにリソースを集中させていくことで、パフォーマンスを高めている改善です。強気でいられる間はこれで良いですが、リソースを減らしても維持できる仕組みが必要です。
「⑤価値組」は、リソースを減らしても、パフォーマンスが向上する理想的な改善です。市場を確実に捉え、追い風状態と言えます。この状態を維持するために、パフォーマンスの計測は重要です。
「⑥弱腰」は、パフォーマンスを気にしながらも、リソースを下げようとする改善です。ビジネスは、縮小していくことになります。市場そのものが縮小しているのでなければ、かならずもっとよい手段があるはずです。
2022年は、ビジネス環境が大きく変化する年です。早めに、自分のビジネスを分析し、来たるべき時代に向けて準備を始めていただきたいと思います。